『サンタクロースっているんでしょうか?』~子どもの質問に答える

『サンタクロースっているんでしょうか?』~子どもの質問に答える

皆さんがサンタクロースを信じていたのは、何歳くらいのことでしょう。小学生でしょうか、もっと下?もしかしたら、大人になった今でも信じている人がいるかもしれません。

「サンタクロースはお父さんだよ」

と現実的な事を言っている子どもも見かけます。今回は、子どもから大人まで、全ての人に贈りたい絵本、「サンタクロースっているんでしょうか?」を紹介したいと思います。

サンタクロースっているんでしょうか

■ 「サンタクロースっているんでしょうか?」の内容紹介

この本は1897年のアメリカ、「ニューヨーク・サン新聞」の社説として書かれたものが大きな反響を呼び、絵本として取り上げられるようになりました。

ニューヨーク・サン新聞に、8歳の子ども、バージニアが手紙を出しました。

「サンタクロースはいないんですか?」

と。

それに返事を書いたのが、記者のフランシス・P・チャーチという人物。彼はぶつぶつと文句を言いながら机に向かい、そうして書き上がった文章が、100年以上たった現在でも多くの人に愛されているのです。彼はバージニアの質問に、やさしく美しい文章で返事を書きました。

「この世の中に、愛や、人への思いやりや、真心があるのと同じように、サンタクロースも確かにいるのです。」

「この世界で一番確かなこと、それは、子どもの目にも大人の目にも、見えないものなのですから。」

「信頼と想像力と、詩と愛とロマンスだけが、そのカーテンをいっときひきのけて、幕の向こうの例えようもなく美しく、輝かしいものを見せてくれるのです。」

(本文より)

■ 「サンタクロースっているんでしょうか?」の魅力

フランシス・P・チャーチの書く文章は、きらきらとした宝石のように、でも儚い壊れもののように輝いて見えます。

「目に見える世界だけを信じる」。

古代からのあらゆる謎が、最新の技術で解明されつつある現代です。今は世界中がそういうものの考えに支配されているのかもしれません。しかしそれは、何て寂しい世界なのでしょう。

本文に書かれているように、サンタクロースを見たことがないからといって、それがサンタクロースがいないという証明にはならないのです。

世界中で悲しい出来事が数多く起こっているのは、そういった「目に見えるものだけ」を信用しすぎた結果からなのかもしれません。

そういえば、サン・テグジュペリの「星の王子様」でも、王子様が同じようなことを言っていましたね、

「大切なものは、目に見えないんだよ」

と。普段の生活に追われ、忘れてしまいがちな事が、こういった絵本や童話を読むと思い出されます。

■ まとめ

「サンタクロースっているんでしょうか?」は、バージニアの質問に対する答えが書かれているだけではありません。人間として不可欠なもの、大切なものが、この中には書かれています。

子どもはもちろんのこと、大人になった人にも読んでほしい、大切な絵本を紹介しました。目に見えるものしか信じられなくなってしまったとき、もう一度絵本を開いて下さい。いつ読んでも感動できる、「サンタクロースっているんでしょうか?」の紹介でした。

『おおきな木』(シルヴァスタイン)~絵本が教える永遠の愛情

『おおきな木』(シルヴァスタイン)~絵本が教える永遠の愛情

シェル・シルヴァスタイン作の「おおきな木」は、ほんだきいちろうさんが翻訳を手がけた後、作家の村上春樹さんが翻訳された事で話題になりました。

きれいな緑色の表紙を見かけた事がある人も多いでしょう。本文は線画のみで色はなく、とてもやさしい文章で表現されています。でもこの絵本、とても内容が難しく、一読ではとても理解が出来ません。今回はそんな考えさせられる絵本、「おおきな木」を紹介します。

おおきな木

■ 「おおきな木」のあらすじ

あるところに、1本のりんごの木と、少年がいました。少年と木はとても仲良し。お互いの事が大好きで、少年は木に登り、りんごを食べ、疲れたら木陰で休みました。木はとても嬉しくて、少年に手をさしのべるかのように枝葉を伸ばします。木の幹はいつも、少年を追いかけて左右に動いています。

しかし時は流れ、少年は成長します。木はひとりぼっちの時を過ごす事が多くなりました。

ある日成長した少年が木の元へやって来ました。嬉しくて仕方のない木に向かって少年は、

「もう小さな子どもじゃないんだよ、お金が欲しいんだ」

と木に無心します。木は、

「りんごを売ってお金を得なさい。幸せになりなさい」

と告げます。少年は木にあるりんごを全て持って行ってしまいました。それでも木はとても幸せでした。しかし木はまた寂しい時間を過ごします。その後も少年はことあるごとに木に無心を続けます。家がほしい、船がほしい。その度に木は枝葉を差し出し、幹を差し出し、とても幸せでした…。

やがて老人になってしまった元少年がやって来たとき、木にはもう何もありませんでした。ごめんなさい、とささやく木に、元少年は、

「もう何もいらない、ただゆっくり座れる場所があればいい。とても疲れた」

と告げました。なら、と木は、切り株だけになった体をしゃんと伸ばして言いました。

「私に座りなさい。切り株は座るのにちょうどいいから」

元少年はそこに座り、木はとても幸せでした。

■ 少年の幸せを願い続ける木

初めてこの絵本を読んだとき、少年が憎くて仕方がありませんでした。木の気持ちを全く気にかけないで、ただただ自分の事だけしか考えない少年は、どこか私自身に似ていたからかもしれません。

しかし、なぜ木はそこまでして少年に与え続けたのでしょうか。木の幸せは自分を犠牲にして、一生を少年と暮らす事だったのでしょうか。

多くの人が、この絵本の少年と木に「母親と子ども」の関係を見ると思います。「木」を母親に置き換えて考えてみましょう。子どもを一番に愛し、どこにも行かせず、欲しいものは全て与え、母親とだけ生きる。

そういった事が木の幸せだったのでしょうか。いいえ、きっと違います。少年が無心する度に木は言います、

「幸せになりなさい」

と。少年が幸せになる姿、それこそが木の幸せなのではないでしょうか。少年の人生に何があったのかは語られていません。ただ、あまり幸せな人生ではなかったのだろうな、というのが窺われます。だからこそ、木は与え、それで少年の幸せを願ったのかもしれません。

もちろんこれは、私の解釈です。全く違った考えを持つ人も大勢いるでしょう。その時はこう思ったけど、時間が経ったら解釈が変わるという事もあります。何度も読み返して、その度に考える絵本。「おおきな木」は、素晴らしい魅力をもった絵本だと思います。

■ まとめ

「おおきな木」は1964年に出版され、30以上の言語に翻訳された絵本です。世界中でたくさんの人に読み継がれてきたこの絵本は、読んだ人の数だけ解釈があるでしょう。きっとそれがこの絵本の読み方です。あなたは、少年と木の事をどう思いますか?憎いでしょうか、哀れに感じるでしょうか。それとも全く違った事を思うのでしょうか。ずっと本棚に入れて、たまに思い出してまた考える。そんな絵本の紹介でした。

『おかあさんとあたし。』(ムラマツエリコ、なかがわみどり)~私とお母さん

『おかあさんとあたし。』(ムラマツエリコ、なかがわみどり)~私とお母さん

「おかあさん」
「ママ」
「おかあちゃん」

小さな子どもが母親を呼ぶ舌っ足らずな声は、まあるくてやさしい。そんな風に感じます。

私たち大人が母親を呼ぶときは、甘えたいような、そうでもないような「お母さん」。

今回は、そんな大人に贈る、ムラマツエリコ・なかがわみどりの絵本、「おかあさんとあたし。」の紹介をします。

おかあさん

■ 「おかあさんとあたし。」の内容と魅力

この絵本にストーリーはありません。登場人物は「おかあさん」と「あたし」だけです。その二人が織りなす「ほんの些細な日常」が、この絵本のテーマとなっています。

おかあさんにリップクリームを塗ってもらうあたし、頬と頬をくっつけあう二人、足踏みしながら、

「おかあさん、おかあさん」

と話しかけるあたしに、

「おしっこ行っておいで」

と声をかけるおかあさん。そんな日常を、シンプルなタッチの線画で表現されている絵本です。

著者のムラマツエリコ・なかがわみどりの両氏は、この「お母さんと子ども」のデザインを得意とするイラストレーター兼デザイナーであり、このシリーズは絵本の他にもポストカードなどでの販売を展開しています。

「おかあさん」はいつも、笑っていたり怒っていたり、絵を描いたり手を振ったり、何も特別な事はしていません。子どももまた、おかあさんが大好きな子ども。それだけなのに、ページをめくっている内にだんだん胸が熱くなってしまいます。なぜなのでしょう。

■ 「おかあさんとあたし。」が絶賛される理由

女優の新垣結衣さんが、「おかあさんとあたし。」を紹介した事で話題になった事があります。新垣結衣さんも、

「懐かしい気持ちにさせてくれる」

「読みやすいけどグッとくるものがある」

と評していました。この絵本の帯コピーには「大人になっちゃった自分にあげる本」と書かれています。

この絵本が高く評価される理由は、”過ぎ去った自分”、”もう戻れない自分と母親”が描かれているからこそ、たくさんの人を感動させているのではないでしょうか。

たとえ今、母親と近くにいても、仲良く暮らしていても、あの幼少の頃の「一心同体」といった感じの濃厚な時間は、もう二度とありません。その事が分かっているからこそ、過ぎ去った時間を懐かしくもさみしく思い出すのかもしれません。

この絵本を読んでいるうちに、次第に涙が出てしまうのは、この絵本に描かれている”あたし”と”おかあさん”が徐々に自分の子どもの頃と重なってしまうから。私の子どもの頃もそうだった、おかあさんはこう言ったっけ…そんな風に、忘れていた記憶を思い出させてくれる絵本だからなのではないでしょうか。

私たちは、この思い出を誰に伝えてあげたらいいのでしょうか。そう思いを馳せると、”あたし”の目線で読んでいた「おかあさんとあたし。」は、将来は”おかあさん”の視点で楽しむ事が出来るかもしれない、二重にオトクな絵本かもしれませんね。

■ 次の世代の「おかあさん」へ

母親が子どもを手にかけるという悲しい事件が多く起こっています。その逆も然り。一体私たちに何が起きているのでしょうか。

この絵本のような、ほのぼのとした、けれども優しい時間は、今の時代には合わないのでしょうか。

私は、そうではないと信じたい気持ちでいっぱいです。物心ついてからのたった数年の記憶が、私たちの心に何十年も住みついて、大人になってしまった私たちの胸をあたたかく打つのです。この気持ちはきっと、人間が持っていなければいけない大切な感情であると思います。

大人になった自分、母親になった自分や誰かに贈りたい、壊れ物のように大切にしてほしい絵本を紹介しました。ぜひゆっくりとページをめくってみてください。帰れない子どもの頃の自分と、おかあさんがそこにはいます。

『花のかみかざり』(いもとようこ)~うさぎの秘密と赦しの絵本

『花のかみかざり』(いもとようこ)~うさぎの秘密と赦しの絵本

愛らしい仕草の赤ちゃんや動物たち。見ていると知らずに笑顔になってしまいます。あの無垢な瞳や、まあるい体からは香り立つような、

「抱きしめてちょうだい」

というメッセージを感じます。

でも、抱きしめてもらえるのは赤ちゃんや動物たちだけなのでしょうか?

今回はいもとようこさんの絵本、「花のかみかざり」を紹介したいと思います。

花のかみかざり

■ 「花のかみかざり」あらすじ

病院で看護師として働くうさぎは、いつもにこにこ笑顔の優しい人。今日も狸のおばあちゃんと散歩に出かけます。道に咲いていた花をつんで、おばあちゃんの髪に飾ると、とたんにおばあちゃんの顔は明るくなります。

「あなたは本当に優しい人。あなたにお世話してもらう人は、幸せ者だわ」

しかし、それを聞いたうさぎの顔は曇り、突然泣き出してしまいました。驚いて理由を聞くおばあちゃんに、泣きじゃくりながらうさぎは言います。

「私は優しい人なんかじゃないんです。…私は酷い人なんです。」

そして、ずっと秘密にしていた自分の過去を語り出しました。

看護師になったばかりのうさぎの仕事は、小さな子どもの面倒を見る事でした。うさぎが子どもを抱いて歩くと、みんな笑顔になりました。しかし、狼のおばあちゃんだけは、怖い顔をしてじっとこちらを睨んでいます。うさぎは

「嫌なおばあちゃんだな」

と思っていました。

ある晩、狼のおばあちゃんからの呼び出しに、部屋に向かったうさぎ。するとそこには、かすれた声で必死に手を差しのばす、狼のおばあちゃんがいました。

「抱きしめておくれ…」

狼のおばあちゃんは言いました。しかしその形相に驚いたうさぎは、ただ恐ろしくなってしまって、その場から逃げ出してしまったのです。

翌朝、狼のおばあちゃんは冷たくなっていました。うさぎはそこでようやく、狼のおばあちゃんの気持ちに思い至ったのです。

子どもを抱いている時こちらを睨んでいたのは、抱っこしてもらえる子どもが羨ましかったから。狼のおばあちゃんの声が聞こえてきます。

「抱きしめてもらえるのは、子どもだけかい?」

「年寄りは、抱きしめられたいと思ってはいけないのかい?」

うさぎの懺悔を、黙って聞いていた狸のおばあちゃんは、うさぎに言いました。

「私を、狼のおばあちゃんだと思って、抱きしめておくれ!」

うさぎは、大声で泣きました。狼のおばあちゃん、ごめんなさい、と。泣きながら、狸のおばあちゃんを抱きしめました。強く、強く抱きしめました。

やがておばあちゃんは花の髪飾りをそっと外し、うさぎにつけてあげました。そして言います。

「さあ、いつもの笑顔をみせてちょうだい」

うさぎはまた、笑顔でおばあちゃんと散歩を続けました。

■ うさぎの涙が教えること

うさぎに悪気がなかったとはいえ、狼のおばあちゃんはひとりぼっちで寂しかっただろうな、と思うと何とも悲しい気持ちになる絵本です。

私たち大人がこの絵本に涙するのは、きっと抱きしめてもらいたい方だから。どちらかというと、狼のおばあちゃんに感情移入をしてしまうのではないでしょうか。

「抱きしめるのは、愛している印。抱きしめられるのは、愛されている印」。

本文中の言葉です。うさぎの涙が教えてくれたのは、まさにこの事ではないでしょうか。

■ 「花のかみかざり」まとめ

この絵本はどちらかというと大人向けかもしれません。ですが、もし子どもに読み聞かせるとしたら、できたらぎゅっと抱きしめながら、読んであげて下さい。きっとそれだけで、子どもに伝わるものがあるでしょう。

「愛してる」

は、言葉に出さなくてもこんな形で充分伝わるのですから。

以上、いもとようこさん作「花のかみかざり」をご紹介しました。

『あの空を』(菊田まりこ)~挑戦する勇気を思い出させてくれる絵本

『あの空を』(菊田まりこ)~挑戦する勇気を思い出させてくれる絵本

赤ちゃんは、何度も何度も転んで、ようやく立ち上がる事ができるようになります。たまに苛立ってかんしゃくを起こしても、泣いても、決して諦めるというはありません。

私たち大人はどうでしょうか。

「どうせ無理だから」

と、最初から挑戦する事すら諦めていませんか?

今回は、そんな大人に贈る絵本「あの空を」(菊田まりこ・作)を紹介します。

あの空を

■ 「あの空を」あらすじ

菊田まりこさんといえば、「いつでも会える」で一躍有名になった絵本作家さんです。どの作品も少々難しいテーマの絵本で、でも最後には気持ちが温かくなる、そんなストーリーばかりです。

「あの空を」の主人公は、ヒヨスケ。

ヒヨスケの夢は、あの空を自由に羽ばたく事。何度も何度も挑戦します。いつか飛べる、いつかあの空を、と夢見て何度も挑戦しますが、ちっとも上手く飛べません。

「飛びたい、という気持ちだけじゃ飛べないの?」

ヒヨスケは次第に悲しくなって、とうとう飛ぶのを諦めてしまいます。

「だって、頑張っても飛べないのなら、高く上手に自由に飛べないのなら、悲しいからもう飛ばない」。

でも、気づいたのです。本当に悲しいのは、あの空を諦めるという事だと。

今度こそ、次こそ。ヒヨスケの挑戦は、明日もまた続きます。

■ 「あの空を」の魅力

ヒヨスケのひたむきな努力をする姿と、心の葛藤に胸を打たれます。

また、菊田まりこさんは、筆ペンのような強弱のある線ですごく可愛らしいヒヨスケを描いています。ヒヨスケが、

「諦めないで、もう少し頑張ろうよ」

といったメッセージが聞こえてくるような絵本です。

現代は、努力する姿はカッコ悪い、初めてでもサラリとこなせる方がいい、という考えの人が多いそうです。

確かに、できなくて失敗する姿はみっともないかもしれません。やっぱりダメだったとき、笑われそうでそれが怖いのかもしれません。

でも、だからといって挑戦しないのは、その自分こそがカッコ悪い事ではないのでしょうか?

失敗して落ち込んで、でも諦めきれないで手にしたものは本当に嬉しいし誇らしい。

思い出してみて下さい。

初めて自転車に乗れた日の事。初めて逆上がりが上手くいって、世界がくるりと一周した日の事……。

それに挑戦していた自分は、カッコ悪かったでしょうか?

■ ヒヨスケは飛べたのか?

「あの空を」は、ヒヨスケがまた頑張ろうと思った所で終わります。

果たして、ヒヨスケは飛ぶ事ができるようになったのでしょうか。

私は、どちらでも良いのではないかな、と思います。夢だった大空を自由に飛べるようになったのかもしれない。もしかしたら、ヒヨスケは飛ぶ事ができない鳥で、願っても叶わない夢だったのかもしれない。

でも、だからといってヒヨスケの努力は無駄だったのでしょうか。

いいえ、きっと違うでしょう。無駄な努力なんてきっと無いはずです。ヒヨスケの夢が叶っても叶わなかったとしても、きっと得たものがある。そう信じたいです。

■ 贈り物にも

菊田まりこさんの「あの空を」を紹介しましたが、いかがでしたか?読むと、自分も頑張ろう、と奮い立たせてくれるような絵本です。落ち込んだときにページを開いたり、贈り物などにもいい絵本ですね。以上、「あの空を」の紹介でした。

『ハチドリのひとしずく』(辻信一)~小さな水を集めるために

『ハチドリのひとしずく』(辻信一)~小さな水を集めるために

世界各地で自然災害が数多く発生しています。災害の状況を見る度に、地球が壊れてきている事を痛感し、私たち人間の無力さを思います。私たちにできる事は一体どんなことなのでしょう。

今回は、南アメリカの先住民に伝わるお話を、辻信一さんが監修した「ハチドリのひとしずく」を紹介したいと思います。

ハチドリのひとしずく

■ 「ハチドリのひとしずく」のストーリー
森が山火事となり、多くの動物が我先にと逃げ出しました。でも、ハチドリは口の中に一滴の水を含んでは火にかけ、また口に含んで…と何度も行ったり来たりを繰り返します。

ハチドリは中南米、北米に棲息する、体長わずか10センチ程度の小さな鳥です。その姿を見て、他の動物たちは笑いました。

「そんなことをして、一体なにになるというのか」

と。しかし、ハチドリは言います。

「私は、私にできる事をしているの」。

■ 「ハチドリ」の小さな体と大きな力

「ハチドリのひとしずく」は短いお話ですが、とても大切な事を教えてくれます。辻信一さんの解説にもあるように、笑った動物たち=悪人、というストーリーではないのです。ハチドリのひとしずくはとても小さいけれど、動物たちも力を合わせたら、たくさんの水を運ぶ事ができる事を知らなかっただけ…。

この物語は山火事という内容でしたが、何だか今の地球ととても似ていると思いませんか?

壊れゆく地球、そしてこのままではいけない、早く何とかしないと、と警鐘を鳴らす人間達。

あなたはハチドリですか?

それとも、

「何になるというのか」

と笑っている動物たちの方なのでしょうか。

知らないこと=悪人、ではありません。知っていながら何もしない事が、悪人だと思うのですが、あなたはどう思いますか?

■ 私たちは「ハチドリ」になれるのか?

私たち人間にできる事は本当に少ないです。手は二本しかないし、その手でできる事はほんの僅かです。

でも、ハチドリが毅然と、

「私にできることをする」

と言ったように、ほんの少しの行動が山火事を消す事もあるでしょう。

以前読んだマンガで、

「やらない善より、やる偽善だ」

といった台詞がありました。偽善でも何でも、燃えているのは私たちの森(地球)なのです。

どんなことでもいい。何かしら自分から始めてみよう。

「ハチドリのひとしずく」はそういった事を、たった17行の物語で教えてくれるのです。

■ まとめ

「ハチドリのひとしずく」は多くの人々の共感を得ています。やはりその理由は、多くの人が、

「このままでは地球が燃えてしまう」

と危機感を抱いているからなのではないでしょうか。

この本を監修した辻信一さんは「自分にできるひとしずく」として、多くの人にハチドリの物語を伝えるためにこの本を作ったそうです。

立ち向かう火事はとても大きくて熱い。でも、周りには多くのハチドリが側にいます。ほんの少しの勇気を持って、火事を消すために動いてみませんか?

以上、辻信一さん監修、「ハチドリのひとしずく」を紹介しました。

『チロヌップのきつね』(高橋宏幸)~くらい時代を生きた狐の親子

『チロヌップのきつね』(高橋宏幸)~くらい時代を生きた狐の親子

日本の絵本は悲しいストーリーが多い気がしますが、そう思いませんか?赤鬼は人間という友人を得た代わりに、親友だった青鬼を失い、ごんぎつねは撃ち殺されて終わってしまいます。
今回は、そんな切なく悲しい結末を迎えるお話「チロヌップのきつね」(作・たかはしひろゆき)を紹介します。

チロヌップの狐

■ 「チロヌップのきつね」あらすじ

「チロヌップ」というのは、アイヌ語で狐を意味するそうです。チロヌップは狐がたくさん生息する島。春になるときつねざくらの白い花が咲いています。

夏の間、チロヌップに住んで魚をとっている老夫婦のもとに、ちいさな子ぎつねが迷い込んできます。老夫婦はあどけない子ぎつねを、

「ちびこ」

と呼んで可愛がり、首に赤いリボンときつねざくらの花をつけてあげました。

やがて夏が終わり、老夫婦は島を出ました。ちびこは狐の両親と兄さん狐の元に帰り、平和な毎日を過ごします。

しかしある時、空気を引き裂く銃声が。人間たちが島にやって来たのです。

銃に撃たれたことで兄さん狐は殺されてしまい、そこから逃げる途中、ちびこは人間がしかけた罠にかかってしまいます。父さん狐はちびこを人間から守るためにわざと飛び出して行き、とうとう戻ってきませんでした。

残された母さん狐も傷を負っていますが、ちびこのためにエサを運び続けました。雪が降り出したチロヌップに、充分な食料はありません。二匹は身体を寄り添い合い、きつねざくらのように舞い落ちる、白い雪を見ていました。

春になっても、老夫婦はチロヌップにやって来ませんでした。戦争が激しくなって、島に来る事が出来なかったのです。

それから年月が経ちました。ようやく島にやって来た老夫婦が見たものは、島一面に咲くきつねざくらの花でした。

丘の片隅には、おおきなきつねざくらの固まりがひとつ、ちいさなきつねざくらの固まりが、寄り添うようにもうひとつ。

ちいさなきつねざくらの固まりには、赤いリボンのような桜色の花がぽつんと一輪。

そして老夫婦の足下には、ボロボロにさびた、鎖がひとつ。

■ 誰がちびこ達を殺したのか

読むと胸が痛くなるお話です。何度読み返しても、涙が止まらなくなってしまいます。

それと同時に、人間の罪深さと愚かさになんとも言えない怒りが湧きます。

作者自身も、

「密猟者が仕掛けた罠と、それにかかって殺された子ぎつねの白骨体を見た怒りが物語を作った」

と記されています。

人間の身勝手な行動が、こうした罪もない動物を傷つけて殺してしまうのです。

罠だけではありません。「チロヌップのきつね」は戦争を描写しています。結果的に、ちびこ達を殺したのは誰でもない、人間全てとも言えるのかもしれません。

■ 私たちに何ができるのか?

「チロヌップのきつね」は、人間の罪深さや、狐の親子の深い愛情を淡々とした文章で書かれています。

徐々に壊れていく地球。環境問題が深刻になり、犠牲となる動物の保護が叫ばれています。

この物語が発表されたのは1972年の事でした。その時から私たちは、何かする事が出来たのでしょうか。この物語を、全体を覆う「悲しさ」だけに終わらせずに、「では、どうしたらいいのか」を考えたい。

「チロヌップのきつね」は一人でも多くの人に読んでほしい、次の世代にも語り継ぎたい名作です。

※「チロヌップのきつね」は絵本版だけでなく、アニメ版、新書版、物語版など、様々な形で出版されています。

アニメ 物語 新書

『いけちゃんとぼく』(西原理恵子)~少年の成長と切ない恋の絵本

『いけちゃんとぼく』(西原理恵子)~少年の成長と切ない恋の絵本

今回は、西原理恵子さん作「いけちゃんとぼく」を紹介します。

「いけちゃんとぼく」の作者、西原理恵子さんは漫画家として多数の著書を発表してる人気漫画家です。その西原さんが初めて描いた絵本が、今回紹介する「いけちゃんとぼく」です。映画化もされたので読んだ事がある人も多いのではないでしょうか?

いけちゃんと僕

「いけちゃんとぼく」がなぜ多くの人の心に響くのか、あらすじと考察などを紹介します。

■ 「いけちゃんとぼく」のあらすじ

主人公、「ぼく」の周りには理不尽な事がいっぱいあります。毎日たたかれて、フクシューをして、ひとりぼっちで、お父さんが死んでしまって…。

でも、「いけちゃん」という、なんだか変な生き物が側にいるから、「ぼく」は元気に成長していきます。

「いけちゃん」はとってもおかしなな生き物。困るとちいさくなるし、怒ると丸くなる。変幻自在で、温かいとよくふくらむし、時々さみしそうな目で「ぼく」を見ています。

ストーリーはそんな「ぼく」の成長と、それを見守る「いけちゃん」を描いたものです。

物語の最後には、いけちゃんが何者なのかを語られるのですが、それがいけちゃんとぼくとのお別れの時でもあります。

■ 「いけちゃんとぼく」の魅力

西原理恵子さんの絵はとても独特で、初めて読むと、慣れるまで少し時間がかかるかもしれません。しかしその語り口は、マンガの表現とは全く違って、穏やかで詩的な文章がとても多い事に気づかされます。

「わすれないでね。すきだとかならず、かえってこられるの」

「男の子は走るのが急に早くなって、あっという間にどこかへ行っちゃうって。」

これらの台詞はいけちゃんのモノローグですが、もうこれはラブレターのような文章ではないですか。絵柄とのギャップがとても面白く、気づいたら西原ワールドにハマっている事間違いナシです。

■ 「いけちゃん」はどこに行ってしまったのか

「さよなら。私たち、とても短い恋をしたの」

いけちゃんの切ないお別れの言葉です。

「あなたといる時間がとても短かったから、あなたにもう一度会いたかったの。」

いけちゃんはそう言って、ぼくの目の前から姿を消しました。

その後もぼくの目の端に、いけちゃんの気配を感じますが、ぼくが大学生になって、女の子に恋をしたとき、いけちゃんはとうとう見えなくなってしまいました。

いけちゃんは、どこに行ってしまったのでしょうか。

作者の西原理恵子さんは、いけちゃんのモデルは、西原さん自身の子どものイマジナリーフレンド(子どもの時だけ見える、空想の友達)であったと語っています。

その事を考えると、いけちゃんは子どもの頃のぼくの目にしか見えず、大人になったその時、姿を消したと考えられます。

ただし、いけちゃんはイマジナリーフレンドといった存在ではなく、また未来で出会えるであろう人です。果たしてその時、「ぼく」はいけちゃんの事を覚えているのでしょうか。

■ 「いけちゃん」の正体は・・・

今回は「いけちゃん」の正体については具体的に指すのはやめました。ネットで調べたらすぐに分かる事ですが、いけちゃんの事を一番適切に表している言葉はやはりいけちゃん本人であり、それを表現した西原理恵子さんであるからだと思うのです。

ぜひ「いけちゃんとぼく」を読んでみて、いけちゃんが何者なのか、ご自身の目で確かめてみて下さい。

////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

以上、「大人にこそ読んでほしい!おすすめ大人向け絵本10選」をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

1冊でも心に響く絵本をご紹介できていたら、これ以上のよろこびはありません。

気になった絵本があったら、ぜひ書店で、図書館で実際に手に取ってみていただけたら幸いです。